のこ屋根日記6 珈琲

起には喫茶店が多い。
いやいや一宮いったいに多い。自転車で走りまわると、のこぎり屋根の次に「珈琲」「喫茶」の看板が目につく。

「ハタヤ(機屋)」の男は、仕事も家も女に任せ、商談をしに一日に何回でも喫茶店に行く。
「ガッシャンガッシャン、音がうるさくて、家では話ができないだわ」
朝の散歩で寄り、機械が動き出すと駆け込み、相談だぁ、休憩だぁと喫茶店に男たちは集う。
ハタヤを廃業したあとも、喫茶店通いの習慣は残った。

ご存じだろうか? モーニングサービスの発祥は、ここ尾張一宮なのである。
付いてくるのは一般的なトースト、ゆで玉子のほか、なぜか珈琲にピーナッツ、あられ、チョコレート、バナナ、ところによっては小さなおにぎり。
一宮 サンパウロ起の町でいちばん古いという喫茶店「サンパウロ」は7時開店。
4人席テーブル8つに2人席テーブル2つ。7:10に入るとそれぞれバラバラに座り、6つのテーブルが埋まっている。
入口近くのテーブルに座ったらテーブルに水が2つ置いてある。あら、誰かいるのかと隣のテーブルを見ると、そこにも水の入ったコップが1つ。何人もトイレに入っているわけでなし予約席かなぁ。たったひとつ、何もないテーブルがあった。よかった。
優しい年配の女性がオシボリと水を運んでくれる。珈琲とモーニングを注文すると、
「パンに何塗りましょう。バター、ジャム、小倉?」
と聞かれる。
小倉トースト、話に聞いたあんこをたっぷり塗ったトースト。サンパウロでは、珈琲のあとに昆布茶も出てくる。

いつの間にか、満席で相席もちらほら。この間、入口の扉はまったく開かない。雨が降っているのに傘立ても空いている。みなさん、駐車場に面した裏口から出入りしているのだ。
客は新聞を読み、テレビのニュースにはみなで反応する。朝もはよから、なんとも楽しげな空間なのだった。

“のこ屋根日記6 珈琲” への1件の返信

  1. 何故一宮が豪華モーニング珈琲セット発祥の地かが良く分かりました。スッキリ♪

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