のこ屋根日記3

美濃路起宿での、のこぎり写真展の会期中、私は会場の江戸末期築の商家、旧湊屋文右衛門邸(丹羽家住宅)に泊まりこむ。
宿泊費を浮かせるのが最大の理由だが、こんな家で過ごしてみたかった。もちろん、保存を目指して活動中なわけで、空き家になって以来、調査や見学会のたびに掃除はするが、宿泊したのは、昨年夏に夜通し調査と打ち合わせをした名工大の男子学生のみ。
例えて言えば、誰も住まなくなって久しい修復前の安田邸に寝泊まりしているような感じ。
もちろん、寝袋生活。
ここ湊屋文右衛門邸の主屋は裄行7間、梁行6間半の2階建て、切妻造り平入りの建物で、1階には玄関、店、奥店、中の間、居間、仏間、座敷、台所がある。
ほかに、土蔵が3つ、渡り廊下の向こうに離れがある。
正直に言うと、たった一人だとちょっとコワイ。
七輪を使ってのすき焼きパーティーの宴のあと、がらんとした家のなかで、さて、どこで寝ようと考えた。寝袋持って部屋をウロウロし、落ち着いたのが台所。
持ってきた仕事をしょうと思いながら、差し入れのビールを飲んだらダウン。結局、台所の床の上はきつくて、中の間にゴロゴロ移り寝入ったのでした。

余談だけど、なぜか夢に寅さんが出てきた。渥美清がトランク下げて写真展に訪れ、
「さくら、これはいい写真だ。耳をすませば、機織りのガッシャンガッシャンが聞こえてくるじゃあないかぁ」と、私の肩をたたくのでした。
そうそう、一宮は舟木一夫の出身地。映画「花咲く乙女たち」は機織り娘と、女工さんの昼ご飯を作る給食センターで働く青年(これが舟木一夫)の、前向きで正しい勤労青年の青春の物語。

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